4年前のヴェネチア・ビエンナーレ2007において、映像インスタレーションをイタリア館(現・中央館)で発表し、国内外で高い注目を集めていた束芋が、日本代表作家として壮大な新作《てれこスープ》を日本館に展示した。
「井の中の蛙大海を知らず」のことわざに着想を得つつも、束芋は「井戸の中の蛙が住む世界は本当に狭いのか」を問う。展示室内に手描きアニメーション映像が無限に増殖していく空間を演出し、世界の広がりを表現する一方、床中央の井戸に見立てた穴から下を覗き込むと、観客の目に映るのは深く高い空。
水中と天空の世界が「てれこ」(逆転、あべこべ)となり、内と外との関係に揺らぎを生じさせつつ、井戸の底から世界が拓かれる。床の開口部を通して展示室とピロティがつながる日本館のユニークな構造が生かされたインスタレーションとなった。
行列ができる人気となった本展は、会期中、ベルギーのパオラ王妃(当時)がご観覧される栄誉にも浴した。
日本館 展示概要
第54回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展
- 総合テーマ
- ILLUMInazioni – ILLUMInations
- 総合キュレーター
- Bice Curiger
- 会期
- 2011年6月4日~ 11月27日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。