基本情報
ヴェネチア・ビエンナーレ
イタリア統一から間もない1895年、ヴェネチア・ビエンナーレは、ウンベルト1世国王夫妻臨席のもと開幕しました。 当初から2年に一度の国際的な美術展として計画され、イタリア作家ばかりでなく、海外作家の招待制が盛り込まれていました。 会場は、ヴェネチアの大運河からリド島に向かう途上にあるジャルディーニ(公園)に定められます。 こうした基本的枠組みは、120年が過ぎた今も踏襲されており、ヴェネチア・ビエンナーレは世界でもっとも歴史ある国際美術展として、 圧倒的な存在感を誇っています。
世界には200を超える国際展があるといわれますが、ヴェネチア・ビエンナーレを特別な場としているのは、ヴェネチアの都市、歴史、文化の魅力もさることながら、 参加国が自前のパヴィリオンを持ち、そこで自らのイニシアチブにより自国作家の先鋭的な作品を展示するという国別参加方式にあると言えるでしょう。 現在、メイン会場の一つである公園の敷地内には、日本を含む29カ国が恒常的なパヴィリオンを有し、もう一つの会場であるアルセナーレや市内各所に間借りする国を含めると、 約90カ国がこの美術の祭典に参加しています。また、賞制度を残している点も大きな特徴で、パヴィリオンやアーティスト個人を対象とする賞の行方は毎回大きな耳目を集めずにはおきません。
ヴェネチア・ビエンナーレは、1930年代になると音楽、映画、演劇部門が新設され、さらに建築とダンスもその後加わり、 総合的な芸術祭へと拡張を遂げています。昨今は美術展のオープニング時には、7,000人以上のプレスが世界各地から集まるとされ、 もっとも注目度が高く、華やかで、影響力のある現代美術の国際展としての地位を確固としたものにしています。
戦後、国際美術界へ復帰した日本は、1952年にヴェネチア・ビエンナーレに初めて公式参加を果たすと、 1956年の日本館完成を経て、今日に至るまで毎回参加を続けています。1991年以降は、建築展への公式参加も継続して行っています。
ヴェネチア・ビエンナーレ財団公式WEBサイト
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日本館
ヴェネチア・ビエンナーレは発足当初は、公園内に建設された展示館を会場にイタリア及び海外の作品が一括展示されましたが、 1907年のベルギーを皮切りに、各国による自前のパヴィリオン建設が進みました。日本も日本館の建築図案を1932年にビエンナーレ当局へ提出したものの、 この計画は戦争の影響で一旦立ち消えとなります。
待望された日本館は、1956年にブリヂストンタイヤの創業者・石橋正二郎氏の寄付を受けて、ようやく完成に至ります。 ル・コルビュジエに師事した吉阪隆正の設計による日本館は、インターナショナル・スタイルに日本的な特徴を融合させた斬新なデザインとなり、 壁は4つの突き出した衝立に区切られ、床面中央にはピロティにつながる穴が開いています。
展示室の床面積256㎡の限定された空間でありながら、国際的な注目を集めるこの場で毎回、日本を代表するアーティストや建築家が世界に向けて鎬を削ってきました。 これまでに日本館で展示を行った美術家や建築家は、200名を超え、その中には斎藤義重、高松次郎、菅木志雄、草間彌生、宮島達男、田中功起らの美術家や、 磯崎新、伊東豊雄らの建築家が含まれます。
日本館は、2014年に公益財団法人石橋財団の支援をえて、伊東豊雄による改修工事が行われました。 吉阪の設計意図を極力回復する方向での改修が行われ、竣工当時の表情を取り戻しています。ここ数年の日本館の入場者数は、 美術展で40万、建築展で15万人を超えており、世界における日本の文化情報発信の拠点としての日本館の重要性は、ますます高まっています。
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国際交流基金
ヴェネチア・ビエンナーレ日本館における展示は、美術展、建築展ともに国際交流基金が主催しています。 国際交流基金は、その前身である国際文化振興会(KBS)を引き継ぐ形で1972年に設立され、 2003年より外務省所管の独立行政法人として国際相互理解増進を目的に、日本と諸外国との間で文化交流事業を総合的に実施しています。
美術展に関しては、基金は1976年より日本を代表するアーティストの紹介を継続的に行なっています。 基金は、美術専門家(国際美術協議会/国際展事業委員会)の協力を得て選考したアーティストやキュレーターとチームを毎回構成し、 日本館展示の企画、展覧会コーディネーション(作品輸送、関係者派遣、展示施工、カタログ作成)、広報、会期中の管理運用を担っており、 基金のイタリアにおける拠点・ローマ日本文化会館とヴェネチアのローカル・コーディネーターがこうした活動を支えています。 また1991年から公式参加の始まった建築展においても、概ね同様の取り組み方法により日本館展示を主催しています。
加えて国際交流基金は、ビエンナーレ財団主催による企画展等へ招待される日本のアーティストや建築家等の参加を、海外展助成プログラムを通して支援しているほか、 時としてビエンナーレ開催時期に合わせて、日本の芸術・文化を紹介する企画展をヴェネチア市内において実施、あるいは支援する活動も並行して行っています。
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