やなぎみわは、制服姿の案内嬢たちを写した写真シリーズ「エレベーターガール」(1994-98)で注目を浴び、若い女性たちの50年後の姿を視覚化した「マイ・グランマザーズ」(2000-09)や、童話に登場する老婆に少女が扮する「フェアリーテール」(2004-06)など、一貫して現代社会に生きる女性をテーマに制作を続けてきた作家である。
日本館の展示において、やなぎは外壁を黒い皮膜のようなテントですっぽり覆うことで、同館からモダニズム建築の痕跡を消し去った。内部には高さ4メートルの巨大な額縁に納められた“老少女”の巨大写真が5点配置されるとともに、日本館に被せられたのと同じく傾斜した小さな黒テントが入れ子のように吊られ、内部では女性たちがテントを被って旅する映像が流された。かくして「Windswept Women: 老少女劇団」の劇場は組み上げられた。
パヴィリオン本来の仮設性を取り戻した日本館は、生と死、老いと若さ、過去と未来が錯綜・転倒する寓話劇さながらの世界へと観客を導き入れた。
日本館 展示概要
第53回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展
- 総合テーマ
- Making Worlds
- 総合キュレーター
- Daniel Birnbaum
- 会期
- 2009年6月7日~11月22日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。