総合テーマ「夢と衝突 Dreams and Conflicts」に対して、日本館は、長谷川祐子コミッショナーが掲げた「Heterotopias(他なる場所、異所)」をテーマに据えた。多様な文化を受容し、その背後にある既存の文脈を脱構築しながら、「日本化」をはかる日本社会のあり様に着目したもので、曽根裕と小谷元彦2名の作家が出展した。
曽根は、大型の彫刻作品やパフォーマンス、映像、ドローイング、インスタレーションなど多様な表現を展開する作家である。日本館では、《Double River Island (ダブル・リバー・アイランド)》(2002-03)と題し、島の形をした直径4メートルほどの彫刻作品を展示。島は海岸、高原、ジャングル、砂漠、川、洞窟などの要素から成り、世界の縮図のようにも受け取れるが、実際は現実世界では存在し得ない光景であり、「混在のヘテロトピア」とも言える作品となった。
小谷は、身体や知覚、意識の変異・変容をテーマに、日本における彫刻について常に多様な角度から考察し続けてきた。本展では、百合の花をモチーフにした彫刻《Solange》や、廃棄された核爆弾をイメージした《Berenice》、映像作品などを用いた空間インスタレーションを展開。様々な媒体を組み合わせながら、物質的なフォームだけでなく音や光によって、見る者に生物学的、感覚的に「異なった状態」への変異をうながす場をつくり出した。
日本館 展示概要
第50回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展
- 総合テーマ
- Dreams and Conflicts
- 総合キュレーター
- Francesco Bonami
- 会期
- 2003年6月15日~11月2日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。