ヴェネチア・ビエンナーレ発足100周年という「記念回」を迎え、日本館は、全国各地の美術館キュレーターや美術評論家等から展示内容の提案を募る指名コンペを実施し、伊東順二の提案が採用され、コミッショナーに就任した。作家は崔在銀、日比野克彦、千住博、河口洋一郎の4人で、茶の湯に由来する「数寄の美学」をコンセプトにした展示が行われた。会場空間構成は隈研吾、グラフィック・デザインは田中一光、照明は海藤春樹がそれぞれ担当した。
黄、赤、青などカラフルなプラスチックパイプで日本館の外壁を囲んだのは、崔在銀のインスタレーション。崔はさらにピロティを仮設壁で覆い、微生物の誕生を撮影した写真を展示した。隈の会場空間構成により床全面に水が張られた展示室内には、コンピューター・グラフィックの河口による立体映像、漆黒の背景に流れ落ちる滝を大画面に描いた千住の日本画、並びにダンボールを支持体にした日比野の平面作品が配置された。床の水ともよく呼応した作品により、千住は名誉賞(honorable mention)を受賞している。
1995年は、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件を通して日本の安全神話が揺らいだ年としても記憶される。日比野の防毒マスクなどを描いた作品は、日本社会に忍び寄る不安を顕在化するものとなった。
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

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第46回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展
- 総合テーマ
- Identity and Alterity
- 総合キュレーター
- Jean Clair
- 会期
- 1995年6月11日~10月15日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。