1966年のヴェネチア・ビエンナーレで、1500個のミラーボールを地面に敷き詰めるパフォーマンスをゲリラ的に行った経験をもつ草間彌生が、27年ぶりに日本代表作家としてヴェネチアに凱旋した。
1960年代にニューヨークを舞台に先鋭的な活動を展開した草間は、当時から世界にもよく知られた作家ではあったが、強迫観念や常同反復を特徴とするその作品の特異性ゆえに、多くの誤解と偏見に囲まれていた。
「神話的な草間像におもねることなく、戦後のモダニズム美術の流れの中での草間の高い達成を紹介する方針を取った」と建畠晢コミッショナーが述べる日本館の展示は、国際的なステージでの草間再評価を後押しするものとなった。
展覧会は、ミニ回顧展のように初期のネットペインティングやソフトスカルプチャーから近作・新作までが所狭しと展示された。その中心となったのがインスタレーション作品《ミラー・ルーム(かぼちゃ)》(1991)だ。会場の一角に、黄色の背景を黒い水玉模様で埋め尽くした空間をつくり、その中央に2メートル角の鏡張りのキューブを設置した。内部にはかぼちゃが無限増殖するかのように映り、ミラールームの空間と混然一体となる不思議な感覚を観客にもたらしていた。
日本館 展示概要
第45回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展
- 総合テーマ
- Cardinal Points of the Arts
- 総合キュレーター
- Achille Bonito Oliva
- 会期
- 1993年6月13日~10月10日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。