この年、日本館は日本の現代美術を代表する2名の彫刻家の作品を展示した。その一人、遠藤利克は一貫して木を素材にしている作家であり、もう一人の村岡三郎は主に鉄を素材にしている作家である。
遠藤は、日本館の展示室中央に直径4.1メートル、高さ3メートルにもなる巨大な円筒形の新作《EPITAPH-cylindrical》を設置したのをはじめ、大作4点を展示した。どの作品も表面を漆黒に焦がした木の塊からなり、無言の黒いマッスとタールの臭いが会場を支配した。
海外初の作品発表となった村岡は、鉄や酸素ボンベを用いた9点の彫刻を出品した。新作となった《酸素-ヴェネチア》は、垂直に立てられた鉄板と6本の酸素ボンベが連接し、その端に取り付けられたスピーカーからは水中マイクでとらえたヴェネチアの海の音が流れる展示となった。
両者の作品は、一つのスクールとして括られるような共通の傾向を示していたわけではないが、原初的な物質との関係を問い、重厚な観念性を帯びた作品群は、緊張感のあるインスタレーションとして際立った達成を示した。
日本館 展示概要
第44回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展
- 総合テーマ
- Dimensione Futuro (The Artist and Space)
- 総合キュレーター
- Giovanni Carandente
- 会期
- 1990年5月27日~9月30日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。