日本館コミッショナーのたにあらたは、彦坂尚嘉、北山善夫、川俣正の3名の出品作家を選出した。たには、「3名の作家は『反芸術』や『コンセプチュアル・アート』、『もの派』というこれまでの動向に対する批判から展開した表現によって特徴づけられる」と述べ、自身も含めて戦後生まれの布陣によりビエンナーレに臨んだ。
彦坂は、従来の絵画の概念を覆す作品を追求し、日本のコンセプチュアル・アートを主導した人物として知られる。本展では、つなぎ合わせた厚板の上に絵の具でギザギザとした独特の図を描いた「ウッドペインティングによるプラクティス」シリーズより11点を出品した。
北山は、和紙や竹、革、布などを用いて大型の立体作品を制作する作家である。有機的なフォルムに生き生きとした彩色を施した《言い尽せない》など新作を含む6作品を展示。日本伝統の素材や形態を感じさせる北山の作品群は、外国に類例のないものとして特に好評を博した。
川俣はビエンナーレへの出品に向けて、現地で1カ月の滞在制作を行った。日本館の壁面や階下のピロティに無数の材木を張りめぐらせ、内外の境界を曖昧にする大規模なインスタレーションを展開。また、館内には作品構想の写真パネルを展示し、制作プロセス自体も作品の一部ととらえたプロジェクトであることを提示した。
第40回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展
- 総合テーマ
- Art as Art
- 総合キュレーター
- Luigi Carruchio
- 会期
- 1982年6月13日~9月12日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。