1968年の学生運動に端を発する混乱によって1974年展は中止となり、4年振りのビエンナーレ開催となった。この年のビエンナーレの総合テーマである「環境」(のちに「環境・参加・文化構造」に再編)に沿って、日本館コミッショナーの中原佑介は、写真家・篠山紀信による家を被写体にしたシリーズ写真を出品作品に選んだ。日本館初となる個展形式の展覧会であり、建築家・磯崎新が会場空間構成を行った。
「家は、生活様式の接続性が最も顕著にあらわれる場所であり、この意味では、どの文化領域においても『環境』の概念が本来の形で見えてくる」と中原はカタログに記している。本展では篠山が日本各地を旅し、農家や大名の宿、置屋、公衆浴場などの古い家屋を撮影した約100点の写真を展示した。
「家 meaning of the house」シリーズとして知られるこの作品群は、建物の外観やその周囲に広がる自然風景、内部の造りや調度品、雑貨などを写し撮ることで、日本人の生活様式や儀礼的な慣習、そしてその精神までもが表象されている。
すべて100cm×120cmに統一された作品は、会場の壁4面にグリッドをびっしりと形成するように展示された。また、床には灰色のカーペットを敷き、天井を白い布で覆うことによってニュートラルな空間を生み、写真を際立たせる効果をもたらした。
1972年に外務省所管の特殊法人として設立された国際交流基金は、この回より日本館展示を主催することとなり、現在に至っている。
第37回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展
- 総合テーマ
- Environment, Participation, Cultural Structures
- 総合キュレーター
- Vittorio Gregotti
- 会期
- 1976年7月18日~10月15日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。