1972 第36回
ヴェネチア・ビエンナーレ
国際美術展

日本館コミッショナーは同一人物が2度続けて務めることが決まり、東野芳明が前回に続いてコミッショナーに就任した。東野は、ともに1940年生まれ(当時32歳)の宇佐美圭司と田中信太郎を選出。それまでのビエンナーレに参加した作家に比べ、より若い世代から選ばれたといえる。日本館内部には宇佐美による絵画作品を、ピロティ部分には田中のインスタレーションを展開した。

宇佐美は、画面全体が抽象的なモチーフで覆われた《溶解・身体》(1964)など1960年代中期の作品や、終生にわたり描かれた人型を用いた「ゴースト・プラン」シリーズ、レーザー光線を使用した「レーザー・ビーム・ジョイント」シリーズをパネル展示によって紹介した。前回の荒川修作に続き、宇佐美は自身の絵画の展開を一望できるような個展形式で臨み、話題を集めた。

田中は「空間構築」をコンセプトに、日本館の階下にあるピロティを使い、 1.5 メートルから 3 メートル四方の、アクリル板とアクリル板の間に金属粉を詰め込んだ幾何形体的な作品で空間を埋め尽くすミニマルなインスタレーションを展開した。

前回から賞制度が廃止され改革途上にあったビエンナーレを総覧して、「世界のヒノキ舞台といった権威はすでに失われていたことを、だれもが感じとっていた」(『みづゑ』1972年8月号)と美術評論家の針生一郎は辛口なコメントを残した。

宇佐美圭司
田中信太郎《 Mort + Coagulation によるインスタレーション》

日本館 展示概要

出品作家
宇佐美 圭司 | 田中 信太郎
コミッショナー
東野 芳明
主催
国際文化振興会

第36回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展

総合テーマ
Work or Behavior
総合キュレーター
Mario Penelope
会期
1972年6月11日~10月1日
すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。
著作権者が不明の画像はクレジットを記載していません。
close閉じる