1964 第32回
ヴェネチア・ビエンナーレ
国際美術展

「(出品作家に選出された)斎藤義重、オノサト・トシノブ、堂本尚郎、豊福知徳の4名は、いずれも世界の美術の動向に対する深い洞察を基盤にしながら、日本固有の伝統を汲んだ新たな表現を模索した作家である」と嘉門安雄コミッショナーは述べる。

1960年に次いで2度目の参加となった斎藤は、合板のレリーフで凹凸をつけた絵画の枠に収まらない連作を出品。深みのある赤色で構成された画面は、どこか切り絵のようにも見える。

オノサトの作品は、鮮やかな色彩で描かれた方形がモザイクのように画面全体を埋め尽くし、そのなかから大きな円形が浮かび上がる「幾何学的抽象様式」による油彩画5点。ミラノから出品した豊福も2度目の参加となり、木板やブロンズ板にいくつもの楕円形の穴を施す表現による彫刻作品9点を展示した。

パリを拠点に活動していた堂本は、車の轍や格子模様を想起させるパターンを赤・黒・白の3色で連続的に描いた「連続の溶解」シリーズを発表。厚く塗られた絵の具とブラシの跡が画面の物質性を強調し、秩序と無秩序の“溶解”を思考する作品である。この作品により堂本は、初出品かつ40歳以下の作家に贈られる「アーサー・レイワ賞」を受賞した。

第32回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展

総合テーマ
総合キュレーター
Gian Alberto Dell'Acqua
会期
1964年6月20日~10月18日
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