日本館は、杉全直、江見絹子、向井良吉、川端実、菅井汲による展覧会を開いた。コミッショナーに就任した今泉篤男は、選出した5名の作家に関して、伝統的な日本美術を再発見し、自らの作品に反映させている作家たちであるとカタログの中で述べている。
江見は、日本の女性作家として初のビエンナーレ参加となった。先史時代の洞窟壁画や欧米の抽象画に影響を受け、独自の表現を模索し続けた江見は、抑えた色調と重厚な質感が特徴の「作品」と題した一連の油画を出品した。
1958年に渡米しニューヨークを拠点に制作をしていた川端は、「書」を思わせる筆致と鮮烈な色彩が特徴の《強烈な赤》(1961)など8点を出品。菅井は居住していたパリから出品し、明快な色彩と形態で構成されたダイナミックな抽象絵画を発表した。この出品で菅井は、45歳以下の作家に授与される「デヴィッド・E・ブライト基金賞」を獲得した。
杉本は、亀甲に着想を得た6角形の模様を大胆に描いた「きっこう」シリーズを、彫刻家の向井は、人間の営みの儚さを蟻の巣になぞらえた初期の代表作「蟻の城」の連作をそれぞれ展示した。
第31回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展
- 総合テーマ
- 総合キュレーター
- Gian Alberto Dell'Acqua
- 会期
- 1962年6月16日~10月7日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。