コミッショナーに建築批評家の五十嵐太郎が就任し、建築家の石上純也と植物学者の大場秀章が出展作家に選ばれた。これまで石上は、45m四方のガラス張りの建物を305本の細い柱が支える《神奈川工科大学KAIT工房》(2008)や、長さ9.5×幅2.6メートル、厚さは3ミリと極限まで薄くした《テーブル》(2005)などを発表し、次世代の気鋭建築家として大きな注目を集めてきた。
従来の建築展は模型や図面、写真、映像などを見せるのが一般的であるが、日本館の周囲には石上が設計した4つの1/1スケールの温室が仮設され、内部には、大場との協働により現地の植生が再現された。
他方、日本館の展示室内は壁面に都市風景のドローイングを施したのみで、ほぼ空っぽの空間となる大胆な展示であった。薄いガラスとごく華奢な柱によるそれぞれの温室には、空調設備の代わりに開口部が設けられ、機械に頼らない環境を創出し、温室の内部と外部の空間が溶け込む工夫が凝らされた。
ガラス張りの温室は、1851年ロンドンで初めて開かれた「万国博覧会」の会場であるクリスタル・パレスを連想させずにはおかない。五十嵐は、「展覧会の起源にたちかえりつつ、新しい建築の始まりを提示するものとなるだろう」と予見した。
日本館 展示概要
第11回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展
- 総合テーマ
- Out There: Architecture Beyond Building
- 総合キュレーター
- Aaron Betsky
- 会期
- 2008年9月14日~11月23日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。