日本発の建築理念・メタボリズム(新陳代謝)の提唱から50年を経た本ビエンナーレにおいて、北山恒コミッショナーは、「TOKYO METABOLIZING」を日本館のテーマに掲げ、塚本由晴と西沢立衛による都市を構成する新しい「家」のカタチを紹介した。
建物が絶え間なく建て替えを繰り返す東京は、メタボリズムの思想を体現しているとも言えるかもしれない。ただし、2008年のリーマン・ショック後、「生活を主体とした静かな要素の集積が都市の変化を創ろうとしている」と北山は言う。本展では、塚本と西沢による、東京の密集市街地の中の新しい建築に焦点をあてた。
塚本は、小さな旗竿地に位置する自宅兼オフィス《ハウス&アトリエ・ワン》(2005)を取り上げた。プライベートな住居とパブリックな仕事場が混在する建築であり、隣家の視線を受け入れるガラス張の壁、屋上やバルコニーには開放的な半外部空間をつくるなど、外部と内部のつながりが意識されている。
西沢は、ひとつの敷地のなかに6世帯の住戸が分散して建てられた集合住宅《森山邸》(2005)を再現した。独立した建物間には路地や小さな庭のようなスペースが生まれ、仕切りとなる塀がないため、近隣の住民へも開かれた住居となっている。
2人の建築は、それぞれ日本館内に1/2サイズという身体的なスケールで再現された。都市と人、人と人との新たなつながりの可能性を提示し、都市を構成する部品である「家」のカタチの変容が、都市そのものを変化させることを示唆するものであった。
日本館 展示概要
第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展
- 総合テーマ
- People meet in Architecture
- 総合キュレーター
- 妹島 和世
- 会期
- 2010年8月29日~11月21日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。