磯崎新が連続3度目のコミッショナーに就任し、ディレクターに美術家の岡崎乾二郎を迎え、岸和郎、小嶋一浩、張永和(中国)、承孝相(韓国)4名の建築家が参加した。本展は町屋に着目し、アジアの歴史的な4都市―京都、ハノイ、北京、ソウルにおける今日的な住宅実践を取り上げ、「漢字」という文字システムになぞらえて都市や建築の考察が試みられた。
磯崎は、漢字という共通言語と会話などの日常言語が重なり合うことで地域によって言語そのものが変容していく状況は、町屋にも同様のことがいえるという。すなわち、町屋は集合住宅という同じ機能をもちながらも、各都市の環境や人々の生活様式に適応するための解決策は、その土地によって異なり、変化し得る。
展示室には、4つのブースが寄り合うように4都市の建築物が設けられ、中央ホール部分は光や雨風が差し込む街路に見立てられた。仮設の通路には、多くの民族が往来した歴史をもつ、万里の長城にある関所「居庸関(きょようかん)」の壁に刻まれた6カ国語による陀羅尼経の拓本などが展示され、異なる4つの地域的なコンテクストが同居する建築との関連性を暗示した。また、日本館の前庭には、逆さになった2つの家形の彫刻が倒れかかかるようにして自立する、岡崎の彫刻作品《1853》(2002)が展示された。
第8回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展
- 総合テーマ
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- 総合キュレーター
- Deyan Sudjic
- 会期
- 2002年9月8日~11月3日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。