コミッショナーの磯崎新は、建築家の石山修武と宮本佳明、写真家・宮本隆司の3名を選定した。前年の1995年1月に発生した阪神淡路大震災によって、多くの建物が倒壊し社会や都市の機能が失われ、被災者をはじめ多くの人々が強い衝撃を受けた状況を踏まえ、磯崎は「無残な都市の廃墟こそ、今日の日本建築の現状を的確に表すものである」と述べ、「亀裂」を展示のテーマに掲げた。
宮本佳明は自身も震災を経験し、自宅倒壊の被害に遭った一人である。本展では、震災の瓦礫20トン超を実際に神戸から現地へ輸送し、15名のボランティアと協働して展示室の床一面に積み上げたインスタレーションを展開した。廃墟を再現し、震災の記憶を改めて呼び覚ました展示は、同時に都市の構築・建築の不確かさを再認識させるものとなった。
写真家の宮本隆司は、震災によって破壊された街を記録したモノクロ写真により、展示室の壁面を埋め尽くした。加えて石山修武は、散乱する瓦礫のなかにコンピュータを使った装置十数体を設置。地震直後に放送されたテレビやラジオの音声が流れ、たやすく混乱に陥った都市インフラに象徴されるように、利潤と効率性を追い求めた現代社会のもろさを問うものであった。
日本館はこの年、ヴェネチア・ビエンナーレの最高賞であるパビリオン賞(金獅子賞)を受賞した。
日本館 展示概要
第6回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展
- 総合テーマ
- Sensing the Future—The Architect as Seismograph
- 総合キュレーター
- Hans Hollein
- 会期
- 1996年9月15日~11月17日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。