甚大な災禍をもたらした東日本大震災の発生後最初の建築展を迎え、日本館は伊東豊雄コミッショナーのもと、陸前高田市に「みんなの家」を建てる過程を追った展覧会を提示した。乾久美子、藤本壮介、平田晃久の3名の建築家と写真家の畠山直哉が参加した。
「みんなの家」は、仮設住宅での生活を余儀なくされた被災者の方々が集い、暖をとり、飲み、食べ、語り合えるささやかな憩いの場をつくりたいと考えた伊東らが始めた活動であり、コミュニティ再生に向けた取り組みと言えるだろう。本展では、陸前高田に「みんなの家」をつくるため伊東と3人の建築家が個のオリジナリティを超えて共同で設計する過程を数多くの模型で示した。
壁面に貼り巡らされたのは、同市出身の畠山が撮影した震災後の陸前高田のパノラマ写真であり、床から天井へ貫く丸太は津波で立ち枯れてしまった同市の杉の木であった。
瞠目すべきは、展覧会と並行する形で住民の方々と議論を重ねながら、憩いの場となるであろう「みんなの家」が実際に陸前高田に完成したことである。伊東は「みんなの家」を「最もプリミティブな公共建築」と呼び、「最低限のかたちを与えることこそが建築の始まり」と言う。建築は誰のために、そして何のためにつくるのかという根源的な問いに立ち戻る重要さと勇気とを示した日本館の展示は、1996年以来2度目となるパヴィリオン賞(金獅子賞)を受賞した。
第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展
- 総合テーマ
- Common Ground
- 総合キュレーター
- David Chipperfield
- 会期
- 2012年8月29日~ 11月25日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。