第14回建築展総合ディレクターのレム・コールハースは各国に対し、過去100年の「近代化の吸収」をテーマにリサーチし、問題提起することを要請した。日本館チームは高床式のパビリオンを「日本建築の倉」とみなし、近代化と建築の関係を示す多種多様な資料を展示室に結集させた。ピロティ空間では討論や映画上映を行い、展示室中央の穴を介して過去と現在が視覚的に繋がるようにした。
チームは日本建築の100年を「近代化する社会への浸透と葛藤のプロセス」ととらえ、オイルショックや環境問題によって社会全体が方向転換を迫られた70年代を主軸に展示構成した。とりわけ石山修武の《開拓者の家》、伊東豊雄の《ドミノの家》、藤森照信らの《建築探偵団》、象設計集団の《進修館》、安藤忠雄の《住吉の長屋》、坂本一成の《散田の家》、一木努の建築のかけら収集、原広司の《梅田スカイビル》などに注目し、彼らが自主的に行ったリサーチや実験的行動を同時に見せることにより、近代化の転換点における葛藤、思考、創造の軌跡を示した。
展示室には図面や模型をはじめ、手帳、手紙、家具、取り壊された建物の断片、写真や絵画、建築界を支えた雑誌など、建築と社会の状況を示す多様な物証が所狭しと展示された。過去100年から厳選した建築の青焼き図面の頒布も好評だった。こうして国内ではまず不可能な近現代建築史の批評的大観を、ビエンナーレの場でつくり出すことができた。
日本館 展示概要
- 日本館テーマ
- In the Real World:現実のはなし~日本建築の倉から~
- コミッショナー
- 太田 佳代子
- テキスト
- ディレクター
- 中谷 礼仁
- エグゼクティブ・アドバイザー
- 山形 浩生 | 小林 恵吾 | 本橋 仁
- 出展者(建築家)
- 安藤 忠雄 | 石山 修武 | 伊東 豊雄 | 海老原 鋭二 | 鯨井 勇 | 坂本 一成 | 篠原 一男 | 象設計集団(樋口裕康、大竹康市、富田玲子) | 原広司+アトリエ・ファイ建築研究所 | 正橋 孝一 | 室伏 次郎 | 毛綱 毅曠 | 山本 理顕 | 吉阪 隆正 | U研究室
- 出展者(建築史家・都市観察者)
- 相沢韶男・武蔵野美術大学建築学科 | 一木 努 | Chris Fawcett | 長谷川 堯 | 藤森 照信 | 布野 修司 | 堀 勇良 | 真壁 智治
- 出展者(作家)
- 赤瀬川 原平 | 超芸術探査本部トマソン観測センター
- 出展者(写真家)
- 山岸 剛
- 出展者(映画監督)
- 石山 友美(インタビュー:安藤忠雄、ピーター・アイゼンマン、磯崎新、伊東豊雄、レム・コールハース、チャールズ・ジェンクス、中村敏男)
- 主催
- 国際交流基金
- 特別助成
- 公益財団法人 石橋財団
第14回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展
- 総合テーマ
- Fundamentals
- 総合キュレーター
- Rem Koolhaas
- 会期
- 2014年6月7日~11月23日
- すべてのテキストは当時の情報をもとに構成しています。